障害者や難病のハンディを抱えた人との共生社会の実現に向け、世の中は動き始めている。だが、周囲に理解されず生きづらさに悩む実情をどれだけの人が理解しているだろうか。さまざまな生きづらさが渦巻くなか、認知を広げるべく乙武洋匡氏とインタレスティングたけし氏に語ってもらった。
◆ハンディのある人とない人ですれ違う配慮のあり方
ハンディを持つ人と健常者が共生する社会はどうすれば実現するのか。『五体不満足』の著者・乙武洋匡氏(以下・乙武)と、バラエティ番組『水曜日のダウンタウン』出演で話題となった吃音芸人・インタレスティングたけし氏(以下・インたけ)に語ってもらった。
インたけ:どうも今日はよろしくお願いします。
乙武:ちなみに今日の吃音は、10段階中どの程度ですか?
インたけ:今日は3ぐらいです。初対面なのでもっと吃ると思いました。乙武さんには、『水ダウ』の騒動のときに、ツイッターで励ましの言葉をもらって、うれしかったです。
乙武:多くの議論が巻き起こってましたよね。振り返ってみていかがですか?
インたけ:「急に先輩芸人にキレられたらどうなるか」というドッキリ企画で、僕が怒られて吃っている様子が放送されて、日本吃音協会がテレビ局に抗議したのですが、「なんで当事者の僕に一言言ってもらえなかったんだ」というのが率直な感想でした。
番組では吃音をいじったり、触れたりすることもなかったのに。
乙武:協会の抗議に対して、「インたけさんの芸風自体を否定している」という批判的な意見も多かったですよね。
インたけ:こんな騒ぎになったら、もう二度とテレビに出演できないんじゃないか。そう思ってショックでした。
あと「テレビで晒すのはかわいそう」と擁護の声も多かったですが、そう思われると笑われづらくなるので、芸人としては困りましたね。僕は個性だと思ってるので、そういうふうに見てほしいです。
乙武:配慮しているつもりが、ありがた迷惑になっちゃったというわけか。
◆障害の捉え方は十人十色。一人ひとりの価値観を酌んで
インたけ:逆に救われたコメントもあります。「今は多様性が重視されていますし、いろんな人がいるのは自然なことです。頑張ってください」って。僕自身、吃音を重く捉えていないので、たくさんテレビに出て「こういう生き方をしてる人もいるんだよ」ってもっと人に見てもらわなくちゃと思ってます。
乙武:僕も生まれた時から、障害をそこまで重く捉えていないんです。自分でご飯を食べたり、文字を書いたりできる。身障者は、外見で目立つことを嫌がる人が多いのですが、僕は幼少期から目立ちたがり屋だったので、周りから注目されたり、振り返られたりするのが快感でした(笑)。
インたけ:すごい子供時代ですね。僕は吃音を自覚したのは大人になってからで、小さいころから「吃ってる」って言われたことはあったけど、なんのことかわからなかったんですよ。芸人を始めてから「そんなに焦らなくていいよ」と焦ってないのに何度も言われて、吃音を知りました。
◆なぜ障害者だけがセンシティブに扱われるのか
インたけ:乙武さんは、よくツイッターで障害のネタツイートしてますよね? あの反応ってどうなんですか?
乙武:もう13年くらいやってますけど、いまだに批判がきますよ。障害って、背が低いとか、運動神経が悪いとか、数多くの境遇の一つの要素だと捉えているんですけどね。
インたけ:僕も「子供たちが真似する」とも批判されましたけど、外見の特徴を武器にする芸人は多いですよね。そう考えると、障害者が特別扱いされるのは、変な話だなと。
乙武:本人が笑ってほしくてネタにしてると認識してるから笑うし、芸人仲間もいじる。ハゲで笑いを取っている芸人がいるからって、薄毛の上司をいじったりしないじゃないですか。
そんなふうにみんな個別に判断しているはずなのに、なんで障害者は「いじっていいのか、悪いのか」とひと括りで判断されなきゃいけないんだろうって。
インたけ:そうですよね。僕が吃音のある人の代表であるわけではないし、同じ障害者でも違う考えの人もいる。そのことをみんなにわかってほしいです。
乙武:なぜ障害者がこんなにセンシティブに扱われるかというと、単純に絶対数が少ないからだと思うんですよ。健常者もどう接していいかの経験が足りてないんです。“障害のあるAさん”ではなく、“障害者全体”として、主語が大きくなってしまう側面がある。
でもそれはお門違いで、自身の障害をどう捉えているかは人それぞれ。同情されたい、ほっといてほしい。インたけさんなら笑ってほしい。障害者とひと括りにするのはナンセンスで、その人の立場や価値観を酌むべきですよ。
◆偏見やカテゴライズからの脱却こそ、真の配慮
インたけ:僕は18年も芸人をやってて、この喋り方で売れたいんです!
乙武:本当、売れてほしい! そうすれば世間の吃音に対するイメージも明るくなるはず。めっちゃ売れて、吃音が羨ましがられるくらいになってほしいですよ。
インたけ:励みになります! ぜひネタ見てもらっていいですか?
乙武:もちろんです!
当事者一人ひとりで捉え方は異なる。偏見やカテゴライズから脱却することこそ、ハンディを抱える人が求める真の配慮なのかもしれない。
【乙武洋匡氏】
1976年、東京都出身。作家。生まれた時から両上肢両下肢がない先天性四肢欠損。早稲田大学在学中に出版した『五体不満足』は600万部超のベストセラー。小学校教員や東京都教育委員などを歴任。
【インタレスティングたけし氏】
1979年、富山県出身。’05年に芸人デビューし、吃音を持ち味にした歌ネタが特徴で、都内のお笑いライブを中心に活動。吃音者の自助グループ「言友会」が主催する講演会に8月5日出演。
撮影/後藤 巧 取材・文/週刊SPA!編集部
(出典 news.nicovideo.jp)
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